やっぱり目指すはロボコン大賞!! — 森美紀
2000年 北九州高専に入学した私は自分が入った学校があの「ロボコン」をやってる高専だってまったく知らなかった。同じクラス、出席番号順に並んだ机でたまたま前に座っていたのが 野村烈くん。せっかくサッカー部のマネージャーを始めたばかりの私を「俺はロボコンをするために高専に来たんだ!新入社員募集だって!!一緒にいこうぜっ!!!」と言って熱心にロボコンに誘ってくれるこの男。彼が2002年のプロジェクトBOXであばうたぁ~ずを全国優勝へ導いたFlexのドライバー「れってぃ」なのである。はっきり言ってまったく興味のなかったロボコンに 私の高専生活の5年間全部をつぎ込むことになるなんて。。
あばうたぁ~ずは 部活じゃない。ロボコン大賞をとるという目的を達成するために会社という形をかりて強い組織をつくろうと先輩たちが考えたから。その年だけのチームにしないことで 経験と技術と信頼関係を積み重ねる。それがあばうたぁ~ずの強さの秘訣だと思ってる。
5年生になった私は あばうたぁ~ずの社長になった。毎年ルールが出てから全国大会までのスケジュールをたてる。大まかな日程から 各部署の細かな工程までガントチャートをつくってみんなが見える作業場に貼り出す。新入社員の歓迎会にサマーキャンプに鍋パーティ。。。イベントをいっぱい詰め込んで。
社長になった私は製作作業にはほとんどノータッチ。わがままな私のアイデアを形にしてくれたのは、1年生のときから3DCADを使いこなし聞いたこともないような制御理論の本を読みつつ基盤を削りだし設計と寸分の狂いもなく部品を仕上げてくる社員たち。年を重ねるごとに各作業のスペシャリストになっていく。。私の仕事はそんな彼らの環境を整えて作業に集中してもらうことだけだった。おかげさまで私は毎年国技館に連れて行ってもらったし、こんなんでよく5年間もクビにならず社長までやらせてもらえたなと当時の社員の皆様には感謝するばかりでございます。。よく言えば あばうたぁ~ずは社員全員が考えるボトムアップの会社となったわけで結果よければすべてよし。かな?笑みんな ありがとう!
高専を卒業したあとまず京都で着物の染物職人になった。小さな工房なら材料が製品になるすべての工程が見えるし、やっぱりものづくりがしたかったから。それから2008年妊娠出産を経て母親になった私は、子育てを完璧にしようとしてめちゃくちゃ悩んだ。よく考えたら産まれたばかりの赤ちゃんを自分の思い通り完璧に制御しようなんて無理な話だったんだ。そう気がついて、持っていた育児本を全部捨てた。
自分に自信が持てずに毎日笑顔でいられないママは絶対よくない。なにより そんなママに育てられた息子がかわいそうだ。どうにかしてかっこいいママになるために、せっかくやるなら誰もやってないことをやろうと私は競輪選手になる道を選んだ。
競輪学校に入学するため2歳だった息子を実家の両親に預けるとき彼は「おいていかれちゃうー!」といって泣いたけれど、まわり家族みんなに迷惑をかけて選手になるからには私がさみしいとかしんどいとか言うくらいならやらないほうがいい。そしてぜったい強くなってやると心に決めた。
競輪選手になってわかったことがある。どんなに練習をしてもどんなにいい走りをしても私にお金を賭けてくれるお客さんがいる以上結果でしか返せない。自己満足ではダメな世界なのだ。
競輪選手の仕事は日々の練習。OFFの期間はなく1年中試合が入る。練習の強度も時間も休息のタイミングも自分が決める。試合に使う自転車のセッティングも整備もギア倍数も自分で決める。選手ひとりひとりが自分という会社を経営する社長になる。
私は今選手としてママとして毎日が楽しくてたまらない。ここに至るまでたくさんの失敗をしてあちらこちらにより道をしてきたけれど、そのすべてが「今」の私を形づくる大切な材料になっている。いらないと思った部品はひとつもない。
アイデア対決の答えが全国のチームの数だけあるように人生だってたくさんのカタチがあっていいと思う。みんなが考えつくアイデアじゃおもしろくない。やっぱり目指すはロボコン大賞!!
もしあなたが何かやりたいことがあるのなら他人になんて言われようとまずは一歩踏み出してやってみる。だって、やってみなくちゃわからないじゃない!
森美紀
— 女子競輪選手・北九州高専 OG
2000年 国立北九州工業高等専門学校 制御情報工学科 入学
「あばうたぁ~ず」 入社
2001年 「HappyBirthday39」全国大会出場 技術賞受賞
2002年 「プロジェクトBOX」全国大会 優勝
2003年 「鼎」全国大会 特別賞受賞
2004年 「マーズラッシュ」全国大会ベスト4
2005年 国立北九州工業高等専門学校 卒業
株式会社 栗山工房 入社 和染紅型 2代目栗山吉三郎に師事
2007年 趣味で自転車競技をはじめる。
2008年 妊娠を機に栗山工房退社後、出産
2010年 自転車競技大会で1位になったことをきっかけに自転車でカッコいいママになろうとガールズケイリンを志す。
2011年 競輪学校 入学
2012年 3月 競輪学校 卒業後、7月1日 ガールズケイリン第1期として平塚競輪場でデビュー、7月3日 初勝利
2013年 1月 初優勝、6月ミッドナイト競輪を制し初代ミッドナイト クイーンとなるなど、カッコイイママレーサーとして活躍中。