「ひさけん」ロボコン物語(1)~それは”入社”からはじまった~ — 久野顕司
ABUロボコン2014 インド・プネ大会で準優勝し、「ひさけん」の愛称で番組やtwitterを賑わせた久野顕司さん。高専5年間と大学2年間の合計7年、ロボコンでロボットを作り続けた筋金入りのロボコニストの言葉、お送りします。ABUロボコンを語る前に、すべては「あばうたぁ~ず」から始まった、ということでまずは北九州高専時代の濃いロボコンライフから。
久野顕司
▼高専ロボコン
2008年 北九州高専入学とともに、「あばうたぁ~ず」に入社
第21回大会 ROBO-EVOLUTION 生命大進化出場
2009年 第22回大会 DANCIN’ COUPLE ダンシング・カップル 出場
ロボット名:シシマイティー。役職なし。全国ベスト4。
2010年 第23回大会 激走!ロボ力車 出場
ロボット名:tech-cha!!。操縦者・設計者。全国大会出場。
2011年 第24回大会 ロボ・ボウル 出場
ロボット名:VIGO。ピット。全国ベスト4(技術賞)
2012年 第25回大会 ベスト・ペット 出場
ロボット名:velonica。操縦者。地区準優勝。
▼大学ロボコン
2013年 『THE GREEN PLANET』様子見。
2014年 『A SALUTE TO PARENTHOOD』出場。
国内大会優勝、インド・プネ大会準優勝。
物を作るのが好きで。小さい頃からノコギリで木を切ったり、トンカチでトントンやって棚を作ったりとか、そういうことをしているのが好きでした。野球もずっとやっていて。実はロボコンと野球歴は同じで、どっちも6・7年やっていて、高専に入っても最初は野球をやるつもりだったんですよ。
中学2年のときに高専に見学に行って、「高専ってこんなに面白いんだ、工学やってみてえ!」と思って。それで高専に行く!と親に言ったらものすごく反対されたんですよね。「ちゃんと高校に行って大学に行ってくれ」と。当時は高専のことがよく分からなかったみたいです。
そこで何か説得する材料がいるな、どうしようかなあと思っていたときに、テレビで高専ロボコンを見て、これも理由にしようと。ものを作りたいと言う他に、「高専に行って『高専ロボコン』をやりたいんだ!」と説得しました。ただそのときの親の返事は「大学ロボコンもあるよ!」だったんですけど(笑)最終的には「しょうがないからあんたの好きにしなさい」と認めてくれました。
目に見えて動くものが好きで。デザインなんかも興味が無いわけではないんですけど、動いている方がいい。ここの機構が回るとここが動く・・みたいなことに惹かれました。そういう興味もあったので、ロボコンに入ったんです。「あばうたぁ~ず」という団体なんですが、 入った瞬間に思ったのは「うわ、なんか赤い」って。
「あばうたぁ~ず」の前身の団体のときは青や黄色もあったみたいですが、「あばうたぁ~ず」になってからは多分ずっと赤じゃないかなあ。北九州の赤つなぎは作業着として毎日着ているので汚いんですよ、他のところに比べて。地区大会で他高専のユニホームを見ると、他チームは綺麗だなあと思います(笑)
2012年 下列一番左 本人
体育会系です。 先輩とすれ違ったら大きい声で挨拶、時間には遅れない、ルールは守ること!と野球部的な感じ。以前 森さんの回でも出ていますが、 そもそも「あばうたぁ~ず」はバーチャルカンパニーという、会社の形をとっているんです。
ちなみに綴りも拘りがありまして「あばうた」の後は小さい「ぁ」に伸ばす記号は「~」です。棒線じゃないです。
上の代の人たちが先生に「おまえら適当だな」って言われていて、「適当」→「アバウト」→「アバウトな人たち」、で「あばうたぁ~ず」になったみたいです。部長じゃなく、社長がいて、副社長がいて、その下にイベント部、宴会部、会計部、広報部がいて。社長がリーダーで、4年生が副社長でそれが副リーダーにあたって社長補佐をします。予算も会計部が 機械の製作班・回路班の部品の発注を全部しっかりまとめて、現段階の資金と常に照らし合わせて、チーム全体に周知する。
公式サイト
公式ブログ
そうですね(笑)。なんでこうなっているかというと、会社として きちんと活動して結果を出そう、という方針があるからなんです。だから時間にも厳しくて、遅刻が続いた人はまず呼び出されて、上級生と「お話」。それでも改善しなければ”リストラ”ということもあります。あ、ちなみに留年したら辞めさせられます(笑)。勉強もろくにできないやつが、ロボコンできるわけないよな、っていうスタンスがあるので。
名簿の下の方に行くと出てきますが、「新入社員」です。一番上の社長は20なので、15で入ると20歳は正直おっさんに見えるわけで。「うわー上の人だー」って、怖くて実際たてつこうとは思わなかったです(笑)。
野球をやっていたので体育会系の空気に違和感なかったです。ただ新入社員は設計を任されることはないので、やることがないと辛かったです。ロボットができあがってくると、機体をいじれるのは上の学年で、下級生は見るだけになるので。見るのも勉強だなんですけど、見るだけか・・・ひまだなあ・・・という感じはね、 やっぱり辛いですね。ボコンやっている人はみんなそうだと思います。
5年間、優勝狙いでした。 大賞をとれるような面白いロボットを作りたいっていう気持ちもあるんですが、大賞ってつかめないんですよ。どうすれば大賞がとれるのか。すごいロボットを作りたいといは思うんですけど、具体的にどうすれば大賞をとれるのか、目的にどういうアプローチをしていいかが少なくとも僕には分からなくて。 優勝だと勝つことに対して突き詰めれば結果は出るので、自分の中ですっきりしました。 とはいえすごいロボットを作りたい気持ちもあるので、「勝つすごいロボットを作ろう」と思っていました。
(続く)
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